費用償還請求権行使の時期

民法六〇八条一項によりますと、必要費を支出した賃借人は、賃貸人に対し、直ちに償還請求をすることができる旨を規定しています。この場合の直ちにということの意味は、費用を支出したのちに直ちにということであり、賃貸借契約が終了したのちに直ちにという意味ではありません。このことは判例も認めていることです。
 次に、有益費については、民法六〇八条二項によれば、賃借人は、賃貸借契約が終了したときはじめてその償還請求をすることができることになっています。ですから、借家人は、借家契約が終了するまでは、支出した有益費を返してくれと請求することができないわけです。したがって、有益費を償還してくれなければ賃料を支払わないといって、借家人が賃料を滞納していたら、家主は賃料不払を理由とする契約解除の手続をふんで、契約を解除することができます。なお、終了原因は、解約申入による場合であれ、期間満了による場合であれ、合意解約による場合であれ、また義務違反を理由に賃貸借契約を解除された場合であれ、さしつかえがありません。やや問題となりますのは、期間満了し、さらに更新された場合に、最初の期間が満了したら償還請求ができるのか、それとも更新された期間が満了したのちにはじめて償還請求ができるのかということです。更新された期間終了後とみるべきだと思いますが、償還請求の時期は特約によって動かすことができるのですから、最初の期間満了後に、借家人は家主と相談して、償還してもらうようにすれば都合がよいでしょう。
以上のように、家主の有益費償還義務の履行期は、賃貸借の終了と同時に到来することになりますが、有益費が多額な場合、家主は一時にこれを償還しなければならなくなり、つらいことも多いでしょう。例えば、借家人が多額の費用をかけて冷暖房装置をほどこしたときのごときです。そこで、民法六〇八条二項但書は、賃貸人から申出があった場合、裁判所は賃貸人のために適当な期限を許与することができるとしています。ですから、期限が許与されますと、借家人は有益費を償還してもらえなくても、留置権を行使することはできず、建物を明け渡さねばなりません。

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民法六二二条は、六〇〇条を準用して、賃貸人、賃借人間の損害賠償請求権や費用償還請求権などの行使期間を制限しています。それによりますと、費用償還請求権は家主が建物の返還を受けたときから起算してその後一年以内のときまでに行使しなければならないことになります。ですから、必要費償還請求権は借家人が必要費を支出したときから行使することができ、賃貸借が終了し、返還がすんだ後一年の間までに行使しなければなりません。有益費償還請求権は賃貸借が終了し返還がすんだときから行使することができ、その後一年の間までに行使しなければなりません。ただし、有益費について期限が供与されたときはその期限到来のときから起算し、その後一年以内に行使しなければならないわけです。以上のような権利行使期間は、除斥期間かそれとも短期消滅時効期間かということにつき、判例、学説は分かれています。通説、判例は除斥期間と解しています。そして、判例によれば、この除斥期間内に、賃借人が裁判上でも裁判外でも請求すれば、費用償還請求権は保全され、そのときからふつうの債権として一〇年間の消滅時効によらなければ消滅しないとされています。これに対し、有力な学説は、除斥期間と解したうえで、さらに、除斥期間は出訴期間であるとし、一年内に訴を提起することが必要であるとしています。また、短期消滅時効と解する学説も近時は有力となっています。なお、必要費償還請求権は必要費を支出したときから行使できますから、その行使のあったときから一〇年間が建物返還後一年以前に経過すれば、権利行使期間の満了前に、消滅時効により消滅することも生じます。

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