土地買収と借家権

都が、道路拡張など公共事業に必要な土地を取得する方法には、任意買収と強制買収の二つがあります。土地所有者の承諾を得て土地を買い入れ、あるいは、権利者の承諾を得てその土地にある借地権その他の権利を消滅させるやり方を任意買収といいます。これに対して、土地所有者やその他の権判者の承諾がどうしてもえられない場合に、強制的に土地を取得し、または権利を消滅させるやり方を強制買収(収用)とよんでいます。
敷地上の建物に借家権を持っている者があるときには、借家権そのものは収用の対象とはなりません。しかし、借家権の対象である建物の所有者が持っている借地権が収用されますと、借地権が消滅する結果として、借家人はその敷地の占有を主張することができなくなりますので、移転せざるをえなくなるのです。

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借家人の権利は、このように収用の対象とはなりませんが、関係人として補償を受けることができますし、また任意買収の場合にも、同様の範囲で補償を受けることができます。補償の範囲については、国が施行者である場合、公共用地の取得に伴う損失補償基準要綱および、公共事業の施行に伴う損失補償基準の定めがありますが、各地方公共団体においても、ほぼこれに準じた基準をつくって補償を支払うことにしているようです。
そこで、これらの基準に従って、借家人が請求できる補償の内容をあげてみますと、具体的には次のようなものがあります。

(1)動産移転料、移転雑費
(2)営業補償

他へ移転するため営業を一時休止しなければならないときは、営業休止補償を請求することができます。営業規模縮小の補償は、店舗借受人の場合には、他に現在と同一規模の営業をすることが可能ですから支払われませんが、休業または店舗の位置が変更されることにより得意先を喪失することによって生ずる損失は補償されます。仮営業所設置の費用は、店舗借受人には支払われません。また、営業廃止補償も、その土地でなければ営業することができないと認められる場合のほかは支払われません。
以上のような補償のほかに、借家権消滅にかかる補償を請求することができるかどうかについては疑問があります。従前の建物の賃借関係は、移転後においても同一性を保持しつつ移転建物に引き継ぐべきであるとの前提に立てば、施行者が建物の移転先を指定した場合であろうとなかろうと、借家権は消滅していないのですから、補償は与えられないということになります。この前提を貫くかぎり、家主が賃貸を拒否したため移転建物の賃借が不能になった場合は、施行者には補償義務がなく、その補償関係は家主と借家人との内部で処理すべきことになります。ところが実際上は、家主が継続して賃貸することを拒み、あるいは、建物の移築すらしないのが通例ですから、実務上では、賃借の継続が確実と認められる場合のほかは、むしろ賃借関係は終了するであろうという見込のもとに借家人に対して補償しているのが実状です。その補償の範囲は、借家人があらたにその建物に照応する他の建物を賃借するために通常要する費用と、従前の低額な家賃とあらたに賃借する建物について通常支払われる家賃相当額の差額の二年分以内です。
なお、借家権の取引慣行が成熟している市街地においては、更地価格を政治価格と借地権価格とに分け、この借地権価格の二分の一程度が借家権価格として評価され、補償が与えられている例もあるようです。
次に、家主がその店舗を移転した場合の賃借権の存続の有無についてですが、通説は、建物の移転が曵き屋移転の場合には、建物の同一性があるから、借家権はそのまま存続しますが、解体移転の場合には、建物の同一性は失われ、従来の建物が滅失したことになるため、家主の承諾がないかぎり、継続して賃借することはできないと解しています。しかし、実際には、家主がそもそも曵き屋をしないのが通例です。
旧法では、土地収用による損失補償は、収用委員会の収用の裁決のときの価格を算定の基準とし、かつ、近傍類地の取引価格などを考慮するものとなっていました。しかし、地価は裁決時になると高騰するのがふつうですから、早く買収に応じた者との間に不均衡をきたし、ゴネ得の弊害を生じていました。そこで、改正法は、補償金の額は、近傍類地の取引価格などを考慮して算定した事業の認定の告示の時における相当な価格に、権利取得裁決のときまでの物価の変動に応ずる修正率を乗じてえた額とし、その修正率は政令で定める方法によって算定するものと定めました。また、補償金の支払の遅延をさけるため、事業認定の告示があったのちは、土地所有者または土地に関して権利を有する関係人は、権利取得裁決の前であっても、起業者に対して補償金の支払を請求することができるものとし、この請求があったときは、起業者は、ニカ月以内に自己の見積りによる補償金を支払わなければならないこととし、支払を遅滞した補償金に対する加算金の制度を設けました。
借家人は、改正法のもとでも、関係人とされていますが、土地に関して権利を有する関係人ではありませんから、補償金の支払請求をすることはできず、ただ関係人として損失の補償を請求することができるにとどまります。

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