地下掘削工事により家が傾いたとき

隣りでAのビル工事が始まり、地下の掘削が行なわれました。私の家から三〇cmしか離れていないところを掘ったため、家が傾いてしまいました。請け負っているのはB建設会社ですが、A・Bどちらに損害賠償を請求できるでしょうか。
民法では、隣地との境界線附近に井戸や用水溜めまたは下水溜め等を掘る場合は、境界線より二m以上、地中便所等を場合は一m以上、みぞを損るときは深さの半分以上を境界線から離してつくらなければならないと規定するとともに、このような工事をするときは、土砂崩れや汚染された液体がしみこんでゆかないように必要な注意をしなければならないことが要求されています。したがって、これらの制限に違反して地下を掘削しているときは、まだ工事中であれば工事中止を申し入れ、相手が応じないときは、工事中止の仮処分命令を裁判所に申請して工事を中止させることができます。ただ、ビル工事のためには地下掘削が必要であるとしても、それは建築工事中の一時的なものであり、完成後はこのような制限に違反しかいことが多いと思われますが、そうかといって、その工事のために隣人に損害を与えてもよいというわけではなく、家が傾いた原因が隣りのビル工事にある以上、被害者は、加害者に対して不法行為としてこうむった損害の賠償を請求することができます。

スポンサーリンク
間取り

被害者の家から三〇cmしか離れていないところを掘った作業員と、その作業員の使用者であるB建設会社とに損害賠償義務があることにたります。一般に、建設工事の請負においては、隣地の崩壊や井戸水の枯渇など他人に与える影響が大きく、さらに危険性も多いために、工事を担当する者には高度の注意義務が要求されることになります。例えば、地下掘削工事をする場合に、周囲の地盤の弛緩を防止するのに必要な土留工事をするとか、特に軟弱な地盤の上にある建物の隣地などでビル建築のために地下掘削工事をする場合は、地下水位の低下、土砂の崩壊などによる地盤沈下を生ずるおそれがあるわけですから、特に請負人には、地質、地形、建造物に応じた十分な予防措置を講ずる義務があります。判例にも、隣地の建物からわずか二五cm離れたところで、下請人がビル建築のため地下掘削をしたところ、隣地の建物が傾斜し、壁に亀裂を生じ、建具の建て付けが悪くなるなどの損害を与えた場合に、注文者、請負人、下請人の全部に損害賠償責任を認めたものがあります。こういう場合、工事人が必要な注意を怠らなかったことを証明しなければ責任を免れることはできないという無過失責任に近い責任を負わせようとする見解もあります。
次に、ビルの建設工事が下請業者によってなされている場合が問題ですが、ふつうビル工事などでは、元請業者の監督が現場に派遣されていて、下請業者を被用者と同様に使用しているのがほとんどの場合の実情のようです。したがって、そうであるとすれば、元請業者であるB建設会社は下請業者と連帯して損害賠償の義務を負うことになります。
ビル工事を発注した注文者Aには責任がないでしょうか。AB間には請負契約が締結されているわけですが、請負人は、注文者の依頼をうけて独立してその名で工事をすることになりますから、請負人であるB建設会社がその工事によって第三者に損害を加えても、Aはこれを賠償しないのを原則とします。しかし、AのB建設会社に対する注文または指図に過失があったときは、Aに対しても損害賠償を請求することができます。そして、この場合、B建設会社にも過失があるときは、AはBと連帯して損害賠償責任を負うことになります。したがって、このような場合、被害者は、A・B双方に対して損害の全額について賠償を請求することができます。問題となるのは、注文または指図に過失があるとは、どういう場合かということですが、例えば、Bにビル工事をするだけの技術がないのに、特に一定の技術がなければ、隣地の崩壊やはげしい震動をひきおこすおそれのある工事を、Bにその技術がないことを知りながら工事を額めば、注文に過失があることになるでしょう。また、工事の状況によっては隣地に損害を加えるおそれが明白なのに、その予防設備をすることを指図しない場合などは、指図に過失があることになりましょう。Aが工事現場に監督員を出している揚合に、本問のような被害があったとすれば、現実にはその現場監督員や監督の範囲などが問題になりますが、注文者の指図に過失があったことになる場合が多いのではないかと考えられます。
そこで具体的には、B建設会社あるいはA・B双方と話しあって損害の賠償をしてもらうことになりますが、もしどうしても話しあいのつかないときは、訴訟で解決しなければならないことになるのですが、その前に各都道府県の建築指導部建政課か土本部管理課に相談にいくのも一つの方法です。これらの所管課では、サービス行政として、業者と被害者との間の損害賠償について、斡旋の労をとってくれます。

間取り
隣りが境界ギリギリに家を建てている/ 境界ギリギリに家を建てられる場合/ ビル工事と工事前の事故予防対策/ 建築工事のため隣地に立入ることができる/ 地下掘削工事により家が傾いたとき/ 建築物用地下水の汲み上げにより家が壊れたとき/ 工事の繰り返しで地盤沈下し家が壊れた/ 工事人の過失で家が壊れた/ 通行中に工事の落下物でケガをしたとき/ 他人の土地を通さなければ水道ガス管を引けないとき/ 隣りまできている水道ガス管から分けてもらうには/ 工場の地下水の汲上げで井戸が涸れた/ 道路工事で私道の水道ガス管が壊されたとき/ 地下鉄工事で水道管が破裂したとき/ 個人専用の電柱から電気をひくには/ 高圧線が通っている土地を買ってしまったら/ 隣りが盛土したために雨水が流れ込み水たまりになった/ 雨水が隣りから直接注ぎ込む場合/ 他人の土地を通さなければ下水を流せないとき/ 隣地を通っている排水管の修理/ 共同の排水溝の管理費用の分担/ 住宅地の下水が田に流れこんでくる/ 浄化槽が台所の近くに造られたとき/ 共同の浄化槽の管理費用の分担/ 便所の汲取のための隣地の使用/ 違反建築でない建物による日照妨害/ 日照妨害により生計のための鳥が死亡/ 建築協定付の土地を買うと/ 崖崩れで近所の家を壊したとき/ 隣りの失火により家が焼けたとき/ 借家人の失火により家を焼いたとき/ 工事現場の溶接の火花で家が焼けたとき/ 住宅密集地でプロパンガスが爆発したとき/ 危険物運搬車の事故で家が焼けたとき/ 隣りが火事のときに投げ込まれた荷物/ アパートの隣室の音がうるさいとき/ アパートの隣人の失火で家財道具が焼けたとき/ アパートの階上の人の過失で水漏れしたとき/ 分譲マンションの管理費が不当に高いとき/ 分譲マンションの管理会社の変更/ 分譲マンションの屋上は共有/ ペット禁止の特約のあるアパート/ 団地の水洗トイレの管理/ 団地の火事の消火の水で水浸しになったとき/ 分譲マンションの専用部分の修繕/ 近所の商店で共同ビルをつくるには/ 再開発組合の決定に反対できるか/ 共同ビルの立て替えは反対者が一人でもいればできない/ 商業地域における日照妨害/ ビル工事の騒音振動による売上減少/ 隣りの工場の騒音振動で営業ができないとき/ 附近一体の地盤沈下で営業できないとき/ 電光版がビルに遮られて売上損害をうけたら/ 眺望を遮られて商売上の損害を受けたら/

       copyrght(c).間取りガイドドットコム.all rights reserved

スポンサーリンク

プライバシーポリシー