建築物用地下水の汲み上げにより家が壊れたとき

隣りでビル建設が始まり、地下水を汲み上げたため地盤が沈下し、私の家は壁が落ち、床に亀裂が入りました。どうしたらよいでしょうか。
大量の地下水の汲上げは、他の土地の地下水利用を妨げるだけでなく、広汎な地盤沈下をひき起こしますので、「建築物用地下水の採取の規制に関する法律」で規制を受けております。地盤沈下のおそれのある地域で、冷暖房設愉や水洗便所などのため動力揚本機で大量に地下水の汲上げをする場合には、都道府県知事の許可が必要とされていて、この許可を受けないで行なうと一年以下の懲役または一〇万円以下の罰金に処せられます。隣りの工事がこの法律に違反していれば、処罰されることになります。

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建築物用地下水を汲み上げるためには、井戸を掘らなければなりませんが、民法では、境界線から一定の距離をおいて工事をしなければならないとするとともに、土砂崩れなどしないように注意することが要求されています。特に、工事を担当する者には高度の注意義務が要求され、隣地の地盤の崩壊などによる地盤沈下を防止するため、地質、地形、建造物に応じた十分な予防措置を講ずる義務があります。この義務を怠って、実際に損害が生じたときには不法行為(故意または過失により違法に他人に損害を与える行為)として損害賠償を請求できます。この場合、工事の担当者が必要な注意を怠らなかったことを証明しないかぎり責任を免れることはできないとする無過失責任に近い責任を負わせようとする見解もあります。ですからあなたの場合、境界線から一定の距離をおいて地下水汲上げのための井戸掘削事が行なわれたとしても、多量の地下水の汲上げが近隣の土地の地盤沈下をもたらし、さらに、その地上にある建物に損害を与えるであろうことは、当然に予見されることですから、地下水汲上げをする者は、当然に加害を防ぐための注意をする義務があり、このような義務を怠ったために、地盤沈下をもたらし、それによりあなたの家の壁が落ち、床にキレツが入ったのですから、このような損害は、地下水汲上げに起因するものとして、すなわち、地下水汲上げと家がこわれたこととは相当因果関係があるもの、通常生ずると予想される損害の範囲内として、損害賠償を請求することができます。
地下水汲上げのための井戸掘工事のしかたに悪いところがあって、隣地の地盤沈下を引き起こしたとすれば、ビル建設を請け負った建設会社自体が直接井戸掘工事をした場合にはその建設会社が、また、井戸掘工事を下請人にやらせた場合には元請負人である建設会社と下請人とが連帯して、それぞれ損害賠償の義務を負うことになりましょう。しかし、井戸掘工事のしかたに欠点がなかったとしても、ビル建設のため必要とはいえ、多量の水を汲み上げたために隣地の地盤沈下をもたらしたとすれば、ビル建設工事を請け負った建設会社に損害賠償の義務があることになります。もしその建設会社がビル建設工事を下請人にやらせていたとすれば、元請人であるその建設会社が監署員を現場に派遣し、下請人を被用者と同様に使用しているのがふつうですから、その建設会社と下請人とは連帯して、損害賠償の義務を負うことになります。
注文者であるビルの建築主は、原則としては責任を負わないことになっていますが、建設会社に対する注文または指図について過失があれば、損害賠償の義務を負うことになります。そのビル建設の敷地の地質などの関係もあることでしょうが、ビル建設には地下水を汲みあげて使用することを必要とし、しかもその汲上げが過度に行なわれれば、隣地の地盤沈下をもたらすであろうことは、注文者においても予見することができることですから、注文者もまた請負人も、請負契約の締結にあたって、地下水の汲上げによる隣地の地盤沈下の結果を予見し、または予見することができたとすれば、両者は連帯して損害賠償の義務を負うものと考えてよいでしょう。

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