日影規制

 住宅地のなかに中高層ビルが建って、住宅にそのビルの日影が落ちるのをある時間帯を設けて制限しようとするのが、日影規制です。
 日影規制区域は建築基準法に基き地方の実状に応じて地方の条例で定めます。
 第一種住居専用地域では、建物の最高高さが10mと決められているから問題外として、中高層の建築物を建ててもよい第二種住居専用地域内に、日影問題は続発していました。
 とくに、近年の住民の生活意識の向上と、権利意識の主張により、災害から生命を守るという要求はいうに及ばず、健康生活の保持と建物周辺の環境保全という面に注意が注がれるようになってきた。ときの流れは、人間の意識をも変えるものです。
 都会にクル病示多い、青白いもやしっ子が多い、というのも、日照不足に原因があるし、資源不足の日本にとって、太陽熱の利用は必要なことです。
 石油ショック以後、日本の経済は低成長路線を走る軌道修正を受け、省エネルギー問題が見直されて、太陽熱をはじめとする自然の力を建築物に利用しようと動き出したことは、ほんとうにいいことです。本来住宅は、空調設備などは不要で、自然の気候と力をうまく利用するように設計すれば、住めるものです。また住んできたのです。

スポンサード リンク

 日照を国民が等しく最大限に利用するためには、自分の建物だけを考え、建築していた時代はすぎ去りました。
 いまや、狭い土地に多くの建物がひしめき合い、重なりあってなおかつバランスを保つためには、それぞれの建築物は、一定の環境のもとで、地域社会の一単位として多くの建築協同体を作るため、一種の連帯責任を負うべく制限されて当然です。
 建築物をとりまく生活環境も、やはり有限の時代に突入したのです。
 有限だからこそ、高層マンション側が日照を多く利用して占用すれば、低層住宅側は、日影にならざるをえません。まさしく不公平というべきです。
 思うに日照権という権利を初めて主張されたのは,1970年の大阪府弁護士会の公害対策委員でした。
 いまでこそ、日照権という権利は一般に定着しましが、当時は、すごいことを主張するなぁ、という世間の風潮でした。高度成長のひずみは、当時の人間の基本的な欲望さえも忘れさせていたのです。
 これに対し1972年、最高裁判所は「日照・通風は,快適で健康な生活に必要な生活利益であり、加害者が権利の濫用にわたる行為によって、これを妨害したときは、不法行為にもとづく損害賠償請求を認めるのが相当であると判決し、日照権は大手をふって歩み始めました。
 もちろん、行政側としても手をこまねいていたわけではありません。日照紛争を何とかして減らそうとして、用途地域を細分化しました。
 同時に,第一種住居専用地域内では、5m+1.25/ 1 の北側斜線制限と、高さ10mの水平高さ制限を、第二種住居専用地域内で は、10m+1.25/ 1 の北側斜線制限等を設け、敷地の北側に建物を寄せつけて建築しないようにしました。
 しかし、これも冬季の日照のことを考えると気やすめ程度だったといえるでしょう。
 さらに、住居系の地域内に中高層の建築物を建てるときは、各自治体で独自の「日照確保のための建築指導要綱」を作り、行政指導を行なってきました。
 それでも日照権をめぐる争いは、頻発したのです。
 それほど日照は、古代から現代まで、日本人にとって気候・風土・生活上,必要欠くべからざるものでした。
 日照が妨害されると「太陽の帽射熱が奪われる、紫外線による生物学的効果が阻害される、消毒殺菌効果が激減する、冬季の気温低下が著るしい」などの具体的な生活が侵され「青空眺望の視野がせばまります。室内が暗くてうっとうしい、見透しがきいてプライバシーが侵害される」などの心理的な生活が損なわれます。
 すなわち、日照の妨害によって、心身ともに快適で健康な生活が低下していきます。
 これは、都市住民が農村住民に比べて、都市の各種の利便を受ける代りに、ある程度の環境上の不利益は覚悟しなければならないとしても昨日まで日照を得ていた者が、明日には日照を受けられない、という急激な環境の悪化に対して、通風・騒音・電波障害を含め受忍義務をこえるべき性質のものであると判断されます。
 このように、日照問題は、都市が過密化し、生活環境が圧迫してきた以上、法律という力に頼らねば解決できなくなってきました。
 音は「三尺(約90cm)さがって師の影をふまず」といわれました。師が中高層ビルとするならば,影をふまれないように遠慮して建てるべきです。
 ところで、日影規制のねらいは、単なる市街地住宅の日照確保を目的とするだけではなく、日照という物差しを使って、採光・通風・プライバシーなどを含んだすべての居住環境の発展・向上を目指しています。
 すなわち、日照は、居住環境の良悪のバロメーターとなる大切なものといえます。
 1941年、日本建築学会が「庶民住宅の技術研究で4時間日照の確保」を発表して以来,4時間(10時〜14時の間)の日照時間帯の確保は、低層住宅において定着してきました。
 当時は、郊外の住宅地域内に中高層のビルを建てるということはなかったし、暗黙の近所づきあいのルールというものが確立していました。京都や奈良の古い街並みが、今日まで昔に近い形態で続いてきたのも、このような近所づきあいのルールが、住民側と行 政利に存在していたことを示しています。

間取り
建築面積と床面積と延面積/ 軒の高さと建築物の高さ/ 道路斜線制限と高さの制限/ 日影規制/ 建物と民法/ 建築協定/ 防火地域と準防火地域/ 居室と延焼のおそれのある部分/ 不燃材料と準不燃材料と難燃材料/ 室内の日照と採光/ 室内の換気/ 室内の天井高さと床高/ 階段の制限/ 共同住宅の界壁と避難施設/ 確認申請/ 現場でのルールと設計の難しさ/ 違反建築物/ 増改築をめぐって/

       copyrght(c).間取りガイドドットコム.all rights reserved

スポンサード リンク

プライバシーポリシー