建物と民法

 隣りの家の窓から、うちの居間がまる見えだ、建築基準法で何とか取り締りをしてほしい。こういう苦情がH県I市の行政当局にもちこまれました。すなわち、Aさん方では、南側の庭先にBさんの2階建住宅が建ってから、ゆっくりとくつろげなくなった。というのは、Aさん方の居間・食堂が南庭に面し、全面に大きな透明ガラス入りのサッシ戸をいれているので、Bさんの2階の窓から、もろにのぞかれることになったのです。
 民法の趣旨を生かした建築指導要綱を作ってほしい、とAさんは市議を介し、市の建築指導課に申し入れました。行政利は「民間の争いの問題に第三者の市が入るのは不適当である。目隠し設置を盛りこんだ指導要綱を作る考えもない。窓を目隠しすると、目隠しした住宅が、建築基準法の居室の採光基準に違反する」と回答を出しました。ただ、確認申請書が役所に出された段階で役所は、隣地との空きで、隣家から異議の出ないようにする。と書いたゴム印を押して、Bさんに民法上の注意をうながしています。建築基準法以外の問題だからゴム印を押しただけで、役所の責任は回避されたという所は、いかにもお役所的な発想です。
 結局この紛争は、AさんとBさん、ならびにBさん宅を建てた建築業者をまじえて三者が話し合った結果、
 業者の負担で両家の境界線上に設置した高さ1.8mのブロック塀の上に、高さ1mの半透明の塩ビ板を継ぎだして目隠しをする。Bさん宅の北側の2階の窓先に、Aさん宅をのぞけない程度の木の囲いを取りつける。ことで解決しました。
 近年、都会地ではミニ開発が活発化し、このようなプライバシーに関する争いが多くなっています。これらの問題は、いずれも民法の規定を守らない所から生じます。

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 隣りの塀が敷地境界線上にある。隣りの屋根の先端が当方の敷地にはみ出している。雨が降ると、隣りからの流水が私宅の庭に流れこんでくる。隣地境界線に接して住宅を建てている。など、近隣同志の苦情が役所にもちこまれるのです。
 このような苦情は、面と向かっていいにくい反面、これぐらいのことなら隣りも辛抱してくれるだろうという甘えが、建てる側にもあることより起こります。若い住人は、近所づきあいのルールを知らないし、また知ろうとしません。さらに隣人同志のコミュニケーションがなくなってきた所にその原因があります。
 現実的な問題としては、都会の地価の高騰から、わずかな土地でも空地として残しておくのはもったいない。という理由から、少しでも住宅を隣地境界線に寄せすぎるからです。
 あるいは、民法の規定を知らずに、建築基準法の確認申請がOKだったから、住宅の建築はすべてOKだ。と感違いする場合もあります。
 実際に都会の過密地帯を歩いてみると、隣地境界線から50cm以上離して住宅を建てる。という規定が、ほとんど守られていないことに気がつくきます。
 住宅を新築するにしても修理するにしても、人間が入って作業できる50cmの距離は最低必要です。屋根の突出や隣家との騒音防止、防火対策上から考えても、隣家との距離は大きいほどよいでしょう。
 理屈では分かっていてもそのようにコトが運ばないところが凡人のあさはかさであり、欲ぼけのおろかさ、というものです。
 近年は住民の住宅に対する権利意識の向上と社会の高度化・複雑化にともない、明治に制定された民法の相隣関係の規定が、そのまま適用されていいものかどうかを疑問視している弁護士も存在します。
 たしかに、現在の都市の高密度化と、予想もされなかった社会の激変する時代にあって、民法も建築基準法と同じように、建築技術の一端を担っている面もあるから、早急に現代社会に適した法律に改正してほしいと思います。
 生活上守られない法律よりも守られるような法律の下で、隣人愛を大切にしながら生活していきたいと願うからです。

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