建築協定

 山を切り開いて造られたK不動産の開発した住宅街は、すべて2階建であり、その外壁は道路境界線より1.5m後退しています。近辺の既成の住宅地に比べると、はるかに建物の形態と街路の区画は整然としています。
 これは、建築基準法の規制の上に、その街区一帯を別枠の建築協定区域に定めて、居住者全員の了解のもとに規制しているからです。
 そこの住民のFさんに尋ねると「別に今の所、異存はありません。ほんとうに環境のすぐれた所で家族や近所の人も満足しています。よく他の地域からも見学に見えます。ただN駅からの坂道の距離が少し遠いのが欠点ですが、宅地の得にくくなった今日では止むをえないでしょう」とのことでした。せっかくの得がたい住宅地を苦労して手に入れた以上、その状態を維持向上させるためには、建築基準法の一律的な規制よりはその地域に応じた、きめの紬かい制限が必要になってくます。
 これが建築協定で、私的な制限では力が乏しいので、各市町村の条例として盛りこみ、準法律的な取扱いとします。

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 建築協定で協定しうる内容は「建築物の敷地、位置、構造、用途、形態、意匠または建築設備」に関する基準です。
 最近、この協定つきのM住宅に住むTさんより「平家建の家を2階建に増築したいのだが、どうしたらいいだろうか」と相談を受けました。
 もともとK私鉄の不動産部が分譲したプレハブを主にした平家住宅が並んでいる街区です。
 一部住民のなかには、協定書に違反して既に8戸が2階建を建ててしまいました。その列はお互いに迷惑のかからないように一斉に工事をやり出し、一戸ではやりにくいので、それこそ8戸が協定して実行したのです。
 本来、建築協定は住宅地として好ましくない用途の建物を禁止したりして、その街区の建物の質を落さないよう維持・管理を徹底させるものです。
 家を建てるまでは、法に照らして建物の形態をやかましくいうものの、建ってしまえば、あとの増改築は個人の自由となれば、法の規制も尻抜けになってしまいます。
 建築基準法の第8条に「建築物の所有者、管理者、または占有者は、その建築物の敷地、構造及び建築設備を常時適法な状態に維持するよう努めなければならない」とありますが、ほとんど守られていません。
 これは、住宅が建ってしまえば、設計した建築士も足が遠のくのと、入っている人が、いまさら、ややこしい法規など知ろうとしないからです。
 こういう点での一般市民に対する行政側の努力は、余りなされていないように思います。
 プロの建築士でも、建物の維持保全が建築基準法のなかに記されていることを覚えている人は、少ないでしょう。
 誰しも、物事が完了してしまうと、興味がうすれるものです。とくに一世一代の全財産を投げうっての建築となると、全身のエネルギーが燃えつきて、思わずほっと休んでしまいたい気持になるのでしょう。初心忘るべからず。この教えは、いかなる場合にも通用します。
 ところで、さきの相談に対して、建築協定に違反して、2階建とした人たちは、どのようにされたのですか。と逆にTさんに質問してみました。
 「協定は別に法律ではないので、建築設計事務所に頼んで設計してもらいました。確認の表示がしてありましたから、建築基準法には違況していないと思います。隣り近所が話し合い、同じ列で一斉に2階建にしてしまったので、誰も異存はなかったのです。ただ、当地区の町内会長さんは、困った顔をしておられました」
 「なるほど、協定は法律ではありませんから、協定に違反したからといって罰則はありません。お話しによると数十年前の協定ですから、生活の変化の激しい今日では、協定自体が不適当になっている所もありましょう。だから、その協定書をみんなの意志で改定し、2階建にされたらいいんじゃないですか」といっておきました。この回答が正しいかどうかは別です。
 この土地の高価な時代に、あるいは家族変化の流れに追いつけません。平家建でなければいけない、という規制の項目自体が、過去の遺物と考えたからです。
 協定にしろ、法律にしろ、法律によって人間が、あるいは建物が規制される時代をぬきんでて、人間が、建物が法律を運用する、またできる時代がきているように思われます。

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